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て報告した宮丸班は、今年度、幼小児(2〜8歳)に垂直跳における動作の発達過程を分析した。ただし、跳躍高をテストする通常の垂直跳が幼少児には困難なため、頭上の目標物に手を伸ばして触れるJump and Reachとよばれる垂直跳である。年齢がすすむにつれて、膝を深く曲げた準備姿勢から、キック時に腕を振り込むようになり、また空宙での姿勢も頭と背を反らして腕をしっかり伸ばすといった、力強い跳躍動作に移行することを報告した。森下班では今年度、0〜75歳の多数の人々について脊柱の屈曲・伸展度を調査し、立位からの体前屈と後屈における姿勢パターンの分類を試みるとともに、その分類が年齢とともにどう推移するかを報告した。幼児は関節が柔らかい代わりに抗重力筋が未発達であり、成熟後はその逆になる。そうした生理機能が姿勢制御パターンに与える影響を分析することは、調整力を理解する上で貴重である。

2. 加齢に伴う調整力の退行(老化)

人口の高齢化とともに高齢者の福祉や介護のあり方が大きな問題となっているが、その中には高齢者に多発する骨粗鬆症、転倒事故などによる骨折、そして「寝たきり」の問題が潜んでいる。高齢者の転倒を予防するには、高齢者をとりまく環境の整備もさることながら、高齢者自身が足腰を鍛え、バランス能力を維持することが重要である。高齢者のバランス機能に着目した木村班の研究では、多数の高齢者に「開眼片脚立ちテスト」と「閉眼片脚立ちテスト」を適用して、大多数が「異常」と判定されてしまう実態を昨年報告した。今年度は運動クラブで日頃運動している高齢者をとり上げ、バランス能力を含む体力テストを実施した。その結果、一般の在宅高齢者を比較すると太極拳や社交ダンスで足腰を鍛えている運動群が優秀で、特にバランス・テストと垂直跳びに優れていたという興味深い結果が得られた。
バランス能力は歩行運動にも必要であるが、とりわけ障害物のある危険な場所では、バランスの失調がすぐさま転倒につながり、「寝たきり」の原因となる。渡部班は昨年この点に注目して「階段をおりる動作」を三次元的に分析し、大腿部を高く引き上げてから膝を深く曲げて着地する高齢者特有の動作を報告した。次のステップとして渡部らは「アイカメラを用いた注視点(および眼球運動)の研究」を計画し、今年度はその準備としてアイカメラを装着した歩行実験の試運転を行い、実験上の問題点や留意点を検討した。次年度

 

 

 

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